・・・・・・通訳 ・(セン)慕如さん
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完成した作品の前で 
・さん(右)とご友人 
 11月のある日、天気がよかったので、散歩して美術館に向かっていました。何回か足を運んだこの場所、今日はやたらと工事が多くて、松やら、大きな石やら、普段使われないスペースまで、活用されているみたいだった。異様な感じもしましたが、それにも増して生き生きとした雰囲気でした。
 今日から一週間ほど、蔡国強氏の個展準備のため、私はいわきチームの通訳として、参加することになっていました。スタッフに通されて、一階の大きなホールに入っていきます。

 いつもあった天井が取り払われ、私がまず目にしたのは、何パレットかの古い木の破片でした。ボロボロで、原型を想像できないぐらい汚いものでした。この汚い廃船のかけらが、美しい芸術品に変身するなんで不思議な気分でした。

 熱心に蔡さんの話しを聞く・さん
 これからの一週間、いわきチームとの共同作業が始まり、非常に楽しい現場でした。たまに作業が思ったより進まなくても、「まあ、何とかなるでしょう」と、のほほんとした空気が漂っていました。  蔡さんは、いつも散歩がてらの感じでやってきて、ニコニコしながら、作業の状況を確認。確認と言っても、口癖のように、「皆さんに任せば大丈夫だ、全部よく分かっているから、私は何もやることありません」と言います。

 蔡さんは日本語が堪能なので、こんな時には私の出番がなく、ただただ興味津々に周りにうろつき、会話を聞いています。その会話の内容がものすごく面白くて、現場の作業だけでなく、以前一緒に仕事した思い出とか、共通の友たちの話とか、いろんなところへ飛びます。  完成間近のある日、私はボ〜として作業風景を眺めていたら、(

・さんも作業に参加 
あまりやることないので、いつも眺めているだけです・・・)隣にいる真木さんが私にこんなことを言いました。

 「・さんは、去年の今頃、何していたかを、覚えていますか?でもね、来年の今、そして10年後、20年後、あなたはこのプロジェクトに参加したことを一生覚えるでしょう。2009年の11月に、自分は偉大な芸術家と一緒に仕事したことを・・」と。その表情に、温かさと誇り高さが滲んでいました。 いわきチームの皆さんと蔡さんを見てて思いました。彼らを駆動するのは、友情という燃料だとすると、10年、20年経った今も、この気持ちをきれいに燃え続けさせるのは、人間の一番純粋で、通じ合う心を引き出せる蔡さんの芸術が持っている力ではないでしょうか。
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