いわきからの贈り物プロジェクト
2006.06.06  
廃船組立て順調

▼船首部分の組立て開始

Photo: Kazuo Ono
1日で70%の組み立てを終わって2日に入った。かなりのスピードで進んできたが油断はできない。これからとりかかる船首部分の組み立ては前回のワシントンのスミソニアン美術館では苦労したのが思いだされる。

スムーズに組み立てが進むかどうかは、カナダの美術館スタッフにどのようにして欲しいかを伝えるかがポイント。ホークリフトを操作するのは、カナダ人のジェイエフ。彼がカナダ側の組み立て責任者。良く動くし要領もよい。彼のほかに3名のスタッフが協力する。

組み立てを進める我々の立場は、蔡さんの説明ではいわきチームそのものが作品の一部であるとの説明がされている。作業の進め方や休憩をいつとるか、食事はどうするかなど、ほとんど全て我々の希望がみたさる。

世界中のほとんど全ての美術館で個展を要望され成功させてきた蔡さんに対する美術館への信用と、今の蔡さんの力は私たちが思っている以上に大きいようだ。

いわきの廃船が展示される建物の脇に中庭があるのだが、最初ここで喫煙が可能との説明を受けていた。だが、そこ椅子やテーブルは何もなかった。昨日の10時の休憩時には、いつのまにか椅子とテーブルが用意されていたのにびっくりした。

そして休憩時、半数ぐらいのスタッフが日差しをさけ軒下の日陰で一服した。それを見てたかどうかは不明だが、次の休憩時には真新しいテントがはられ、快適になった 誰がどう感じそれを手配したのか、私にとって多いに興味のあるところだった。このことから2年前のワシントンでの蔡さんと私のやりとりが思いだされた。

2年前もワシントンのスミソニアン美術館での蔡さんの個展開催時、蔡さんから要望され組み立てに参加した。交通費や宿泊費は美術館が負担した。私たちはまだ無名に近かったころから蔡さんの作品作りをボランティアで手伝っており、その蔡さんが現代美術の世界で成功していくのをみんなで喜んでいた。そんななかでのワシントンへの招待。全員が喜んで参加したのだった。

作業開始前日、いわきチームのリーダーとして気になっていた。作業中の怪我に対する保険について聞いた。いわきでの作業の時は、ボランティアで参加してくれる人達に短期の保険を必ず実行会がかけていた。善意で参加してくれる人への最低限の愛情からだった。

このことを今回の招待側の蔡さんに伝えると、蔡さんは私に言った。「なぜ早く言ってくれなかったのですか?」
私は答えた。「ボランティア参加者に保険を入れるのは義務でなく 、愛情の問題と考えてます。だからこちらからは言い出しにくかったのです。」             

蔡さんは翌朝早速加入した保険証書を持ってきた。この話には落ちがある。作業2日目珍しく美術館側から朝食の差し入れがあった。食べていると蔡さんがそばに来て小声で言う。美術館スタッフに朝食を用意するように言いました。するとお金を払っている作業者やボランティアに朝食の提供は必要ないのでは?蔡さんは美術館スタッフにこう言ってあげましたと、言ってニコッと笑った。「朝食を用意するのは愛情の問題です。」

こんな教訓がいろいろなところで生かされているのか作業もスムーズで、夕方6時には廃船組み立ては完全に終わることができた。残すは廃船の上へ、蔡さんのふるさと泉州から取り寄せた磁器を載せて完成だ。
▼休憩所 イスとテーブルが用意されていたが、日差しが・・・

Photo: Kazuo Ono
▼船首部分を組み立てるスタッフ(丸北志賀組社員)

Photo: Kazuo Ono
▼組み立てが完了(磁器を載せる前の廃船)

Photo: Kazuo Ono