美術館の壁面に展示される火薬画を製作する日がきた。製作の場所は、海が見える場所でやりたいという蔡の希望で、四倉の工業団地の空き地でやることになった。
絵は仕上がると4m×9mになる。これまで蔡が製作した中では最大の火薬画だ。
日本で作られる和紙の大きさは最大で3m×4mあり、これを3枚つなげたものになる。製作予算の少ない中から購入した高価で貴重な和紙を使う。失敗は許されない。
準備が整った。今まで誰も実際に火薬を使った製作を見たものはいない。参加者全員が緊張し興奮している。蔡は風を気にしている。点火する。予想以上の炎と煙があがる。爆発により飛んだダンボールが風で飛ばされ、空気が入り和紙に火がついた。燃えてしまった。
数日後、予備に買っていた残り1枚の和紙を使い再度屋内で製作することになる。今回失敗したら作品発表の日までに間に合わない。今度はうまくいった。真中にいわき地平線プロジェクトを配置し、これまで蔡が発表した5年間のプロジェクト10個を火薬を爆発させ書き込んでいく。
蔡さんは爆発を自由自在にあやつり、和紙の上に絵を置いていく。その作業は見ていて興奮し楽しいものだった。
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